投稿

「売り切れ」ていたものは何か

イメージ
 読んだ後で質問に答えて、正しく読めたかどうかチェックしてください。 <ことば>➡<読み物>➡<質問>➡<説明と答え>の順番になっています。 <ことば> さきに辞書(じしょ)などでしらべましょう。 有楽町駅(ゆうらくちょうえき):Proper N 市場(いちば):N 産地直送(さんちちょくそう):N 新鮮(しんせん):なA お知(し)らせ:N 通(とお)り過(す)ぎる:通る+過ぎる V 見(み)間違(まちが)える:見る+間違える V 実際(じっさい)に:Adv. 芋(いも):N 干(ほ)す:V 乾燥(かんそう)させる:V 伝統的(でんとうてき):なA おやつ:N 蒸(む)す:V 謎(なぞ):V 解(と)ける:V <読み物> ある日、用事があって東京の有楽町駅で電車を降りました。すると、駅の前で、「マルシェ」というイベントをやっていました。「マルシェ」はフランス語からの外来語で、日本語では「市場(いちば)」です。外にテーブルだけの小さい店が並んで、産地直送の新鮮な野菜や果物、ジャムやお菓子などいろいろなものを売っていました。 私は見る時間がないのを残念に思いながら、急いでいました。ひとつの店の前を通った時、へんなお知らせが貼ってあるのを見つけました。白い紙に、「ほしいものは売り切れです。」と書いてあったのです。どういう意味なんでしょうか⁈ 「売り切れ」とは、もう全部売れてしまって、店にないということです。それでは、「(あなたが)ほしいものは売り切れ」とは、どういう意味でしょうか? お客さんはいつも「自分がほしいもの」を買いに来るのですから、それが売り切れなら、何も売れないはずで、店になりません。それに、お客さんが「ほしいもの」が何か、店の人が先に知ることはできないでしょう。私は不思議に思いながら、通り過ぎました。 用事が終わって、駅にもどってきたとき、へんなお知らせが気になって、さっきの店をもう一度見てみました。それはまだそこにありました。よく見ると…。私が見間違えていたのです。「ほしいもの」ではなく、「ほしいもは 売り切れです。」と書いてあったのです。私の目が、実際にはない「の」を、そこにあるように見ていたのです。 「ほしいも」とは、さつまいも(甘い芋)を干して乾燥させた食べ物で、日本の伝統的なおやつです。芋を蒸してから干してあるので、ドライフルーツのようにそのまま

「やっほー」「ぴえん」は教科書にないことば

私が教えている日本の大学で、教科書にはない日本語を習う授業をしました。日本人の大学生に教室に来てもらって、キャンパスで友達としゃべる時に使うことばを教えてもらったのです。 テーマは、友達を遊びに誘うときの会話です。留学生と日本人学生がグループになって、誘う場面の短いドラマを作って発表してもらいました。教科書には(たぶん)出てこない「若者ことば」がたくさん出てきましたが、その中の2つを紹介したいと思います。 1.「やっほー」 友達と会ったとき、最初のあいさつとして使います。このことばは、もともとは山に登った時に大きい声で叫ぶ言葉でした。山の上から、向かいの山に向かって「ヤッホー」と叫んだら、遠くにいる仲間によく聞こえます。それに、「ヤッホー」とこだま(echo)も返ってきます。そのように山で使われていたことばが、若者の間で今、英語の「Hi!」と同じようなあいさつのことばになっています。明るく、軽い感じで言うのがポイントです。 2.「ぴえん」 がっかりして、残念な気持ちになったことを表します。泣くときの声の擬音語(オノマトペ)からできたことばです。泣く声の擬音語はもともと、「エーン」でしたが、「ピエン」は新しい擬音語で、かわいい感じを出しています。友だちを誘ったのに断られた時などに、「今日は都合が悪いから、ダメだよ。」「ぴえん!」のように使います。悲しそうに言うのがポイントです。 若者ことばには、気をつけることが3つあります。 1つは発音が大切だということです。短いですが、アクセントやイントネーションやスピードなどがとても大切で、それらが適当でなければ通じない場合があります。たとえば、「やっほー」は「や」にアクセントを置いて「y」の音をしっかり発音し、「ほ」の「h」から「o」の音を出す前にちょっと待って小さい「っ」をはっきりさせ、「o」はまっすぐ長くのばします。これを間違えると、最悪の場合「あほう(阿呆fool)」に聞こえてしまうかもしれません。 2つ目は、若者ことばは古くなりやすいということです。例えば、海外で今この記事を読み、5年後に日本に来たとすれば、「やっほー」「ぴえん」がまだ使われているかどうかはわかりません。 3つ目は、使う相手と場面を間違えてはいけないことです。目上の人に対して話すときや、授業や仕事の場面では使ってはいけません。使えるのは、友達とのカジュア

読む練習:漢字の読みまちがい

イメージ
 読んだ後で質問に答えて、正しく読めたかどうかチェックしてください。 <ことば>➡<読み物>➡<質問>➡<説明と答え>の順番になっています。 <ことば> さきに辞書(じしょ)などでしらべましょう。 間違(まちが)える:V2、 書(か)き間違(まちが)える、読(よ)み間違(まちが)える 間違(まちが)い:N   政党(せいとう):N 事務所(じむしょ):N ○○(まるまる)党(とう):fictitious name of a political party     仮(かり)に: ポスター: 自民党(じみんとう): 首相(しゅしょう): 適当(てきとう):なA 引(ひ)っ張(ぱ)る:V1 <読み物>  だれでも漢字を間違えることがあります。日本語を使う人なら、日本人も、外国人も、大人も、子どもも、だれでも書き間違えたり、読み間違えたりします。私は子どものころ、ちょっと怖い読み間違いをしたことがあります。  そのころ私は、小学校3年生ぐらいでした。まだ知らない漢字がいっぱいありましたが、町で漢字を見たら、大きい声で読んでみるのが好きでした。そして、よく間違えていました。ある日、母と買い物に行ったとき、ある政党の事務所の前を通りました。(その政党の名前を、仮に「○○党」としておきましょう。) 政党というのは、政治についての考えが同じ人たちのグループです。例えば、今(2024年2月)日本で一番大きい政党(第一党)は自民党で、自民党のリーダーが日本の首相です。私が小学生の頃も第一党は自民党で、「○○党」は4番目か5番目ぐらいの政党だったと思います。 事務所の入り口に大きいポスターがはってあり、大きい字で「○○党が 【①】 びれば 日本はよくなる」と書いてありました。 【①】 は、私が知らない漢字でしたが、私は適当に「○○党が 【➁】びれば 日本はよくなる」と大きい声で言ってみました。すると、母が急に怖い顔になって、私の手を引っ張って走り出しました。事務所から遠いところまで走ってから、母は私に言いました。 「 【➁】びれば 、 じゃありません!あれは 【③】びれば 、です!ホントにこの子は! ああ、びっくりした…」と言いました。私は  【①】 の字を、 【④】 と間違えてしまったのです。  あれから何十年か経ちましたが、○○党は、今はもうありません。「 【①】 びる」ことができ

「動詞の3つのグループ」って? 五段動詞・一段動詞・変格動詞

イメージ
 9月は、秋学期の始まりです。私は2つの大学で中級レベルを教えていますが、クラスに来る学生の中には、基本的な文法が苦手な人がたくさんいます。文法を勉強したけれどもう忘れてしまった人もいれば、文法を勉強したことがなくて自分でアニメやドラマを見て日本語を覚えた人もいます。そんな人のために、今日は一番基本の「動詞の3つのグループ」について説明したいと思います。これを知らないと、話しても書いてもたくさん間違えてしまいます。 「動詞(どうし:verb)」というのは、「たべる」「みる」のような「動き」を表す言葉です。3つのグループは動詞の意味とは関係なく、活用(かつよう:かたちがかわること)のタイプが違うのです。グループの名前は、教科書や学校によっていろいろあります。 3グループ の動詞は、変格irregularの名前のとおり、不規則に形が変わりますが、「する」と「くる」の2つしかないので、覚えるだけです。  する:しない-します-する-すれば-しよう  くる:こない-きます-くる-くれば-こよう 次に、 1グループ を見てみましょう。1グループには「5段動詞」という別の名前がありますが、これは a/ i /u /e /oの5つの音を使って 形が変わるということです。 聞く:き か ない-き き ます-き く -き け ば-き こ う 待つ:ま た ない-ま ち ます-ま つ -ま て ば-ま と う 乗る:の ら ない-の り ます-の る -の れ ば-の ろ う 2グループ はどうでしょうか。2グループは、a i u e oの変化がありません。 変化しない部分があって、そこに「ない」「ます」「れば」「よう」などをつけます 。 食べる: たべ ない- たべ ます- たべ る- たべ れば- たべ よう 見る: み ない- み ます- み る- み れば- み よう では、どうすれば、 「この動詞は1グループか、2グループか」 ということがわかるのでしょうか。    ① 辞書形(じしょけい:basicな形)の 終わりの音が「る」ではないものは、全部1グループ です。たとえば、「つか う 」「か く 」「はな す 」「ま つ 」「し ぬ 」「よ む 」「いそ ぐ 」「あそ ぶ 」などは、1グループです。  ② 「る」で終わる動詞の中で、 「る」のひとつまえの音が「a/u/o」の

読む練習:キーボードの上のネコ

イメージ
 読んだ後で質問に答えて、正しく読めたかどうかチェックしてくださいね。<ことば>➡<読み物>➡<質問>➡<説明と答え>の順番になっています。 <ことば> オンライン授業、学習(がくしゅう)システム、 キーボード、マイク、 カメラ、 画面(がめん)、ふた、 オンにする、オフにする、プログラム、再起動(さいきどう)する、フリーズする、強制終了(きょうせいしゅうりょう)する、サインインする <読み物>  キーボードの上のネコ  みなさんは、コロナが始まってからたくさんのオンライン授業を受けてきたと思います。学生も大変ですが、実は先生も大変なんです。パソコンを使う授業では、小さなミスが大きな失敗につながりますから。みなさんも先生のいろいろな失敗を見て、「あー、また!」と思ったことはありませんか。  まだオンライン授業にぜんぜん慣れていなかったころの私の経験です。ある日、自分のうちから授業をしていると、雨がザーッと降ってきました。私はその日、ベランダに洗濯物を干していました。「こんなとき、オンライン授業は便利だな。ちょっと学生に問題をさせて、そのあいだに洗濯物を中に入れよう!」と思いました。そして学生たちに「今から5分間で、問題の1番をしてください」と言ってから、自分のマイクとカメラをオフにして、ベランダへ洗濯物を取りにいきました。  急いでパソコンの前に戻ってみると、キーボードの上に、うちのネコ「さくら」が立っていました。私は、パソコンのふたを開けたままだったのです。さくらはキーボードの上で、いったい何をしたのでしょうか。日本語クラスは消えていました。その代わりに、今まで見たことがないプログラムが開いて、画面はフリーズしていました。 「どうしよう!」パニックになりながら、強制終了してパソコンを再起動し、もう一度学習システムにサインインして、やっとクラスに戻ることができましたが、その時間は本当に長く長く感じられました。学生たちは変な顔をしていましたが、だれも何も聞きませんでした。日本語の授業が始まったばかりで、みんなまだ話せなかったのです。  あとから、残念に思ったことが一つあります。それは、あのとき自分のカメラをオフにしなければよかったということです。もしカメラがオンのままだったら、学生たちは授業が突然消える前に、ちょっとおもしろいものを見ることができたのに。そして説明なん

「てから」と「たから」

イメージ
 みなさんは、コーヒーが好きですか。私は昔はあまり好きではありませんでしたが、今は毎日1回はコーヒーを飲みます。 コーヒーを飲むと眠気(ねむけ:眠い感じ)がなくなって、目が覚めますね。私は、よくコーヒーを飲んでから、仕事をします。   この「飲んでから」(してから)という文法は、よく「飲んだから」(したから)と間違えられます。   ① コーヒーを 飲んでから 、仕事をします。  「て形+から」は、することの順番を表します。  「まずコーヒーを飲む」⇒「そのあと仕事をする」  こういう意味です。      ② コーヒーを 飲んだから 、眠くないです。  「普通形 + から」は、原因・理由を表します。  「私は眠くないです。なぜならコーヒーを飲んだからです。」  こういう意味です。 それでは、正しいのはa b どちらでしょうか? ネコのさくらは、ずっとどこかで寝ていましたが、おなかが(a すいてから b すいたから )ご飯を食べに出てきました。 答えは写真の下にあります! b   

「い形容詞」と「な形容詞」 みんながする「いいだ」という間違い

イメージ
 テレビのニュース番組などを見ていると、よく本当に日本語が上手な外国人が出てきます。普通の日本人よりずっと滑らかで豊かな日本語を使って、インタビューに答えていたり、社会や経済の問題について説明していたりします。そんなすごいレベルの人でも、どんな国の人でも、「× いいだ と思います 」のように「いい」に「だ」をつける間違いをするのを聞くことがあります。 「× いいだ 」は初級から上級、超級まで、よくある間違いのキング(王様)ではないでしょうか。その原因はもちろん、日本語に「い形容詞」と「な形容詞」があって間違いやすいということだと思います。 これは初級から何度も勉強する基本のルールです。   ことば 丁寧形 polite f. 普通形 plain f. い形容詞 i-adjective さむい たかい いい さむいです たかいです いいです さむい たかい いい な形容詞 na-adjective ひま しずか げんき ひまです しずかです げんきです ひま だ しずか だ げんき だ 名詞 nown 学生 学生です 学生 だ 「だ」をつけるのは、「な形容詞」と名詞の文だけですが、「です=だ」と思って「い形容詞」にも「だ」をつけて「× さむいだ 」「× いいだ 」と言ったら間違いになります。 でも、そんなことはよくわかっている人でも間違えてしまいます。その原因の一つは、「だ」に強調するイメージがあることでしょう。「本当にいい!」と強く思ったら、「本当にそう だ 」と同じように、つい「×いいだ」と言ってしまうんじゃないでしょうか。 もう一つ、原因が考えられます。それは「いい のだ 」のように、「 のだ 」(話し言葉では「 んだ 」)という表現があることです。「のだ」をつけてもつけなくても意味は同じですが、「のだ」があると、「原因・理由・事情などを説明する」「驚きなどの気持ちを表す」な