「きっかけ」ということば
新しい車両の電車に乗ると、上の方にテレビ画面がついています。商品や会社の宣伝もありますが、短いドラマなど1駅の間に見られる小さい番組もやっています。中には英語を教える番組もあって、日本人がよく使う少し変な英語を、どう直したら自然な英語になるかを教えています。
その中で、印象に残ったのは、「どんなきっかけで日本へ来たのですか。」をWhy did you come to Japan.と言うのは失礼なので、What brought you to Japan.と言いましょうという内容です。
「きっかけ」ということばは、日本語の教科書にも「私が日本語の勉強をはじめたきっかけは、日本のアニメを見たことです。」のような形でよく出てきます。「きっかけ」は、何か新しいことを始める気持ちが起きるような出来事(できごとevent)です。これは名詞なので、「きっかけは、【~こと】です。」のように名詞の形にする必要があります。
実はこの間、「きっかけ」の意味について学生から質問があったときに、私は間違ったことを答えてしまいました。私は「病気になったきっかけ」とは言えないので、きっかけは悪いことには使わないと言ったのですが…。
ニュースを見ていたら、こんな例がありました。「犯罪グループのメンバーになったきっかけは、SNSで見たアルバイトに応募したことだった。」これは悪いことですよね!
つまり、いいことか、悪いことかは関係なく、新しいことを始めるチャンスになった出来事は「きっかけ」と言えるのです。これに対して、病気は自分が「始めよう」と思うことではないので、「病気のきっかけ」ではなく、「病気の原因」と言わなければならないのでした。
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ネコのさくらです。わたしがこの箱で寝るようになったきっかけは、私の飼い主がエアコンを使い始めたことです。エアコンの風が苦手なわたしは、風が来ないこの箱をみつけて、「やったー!」と思いました。
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