「やっほー」「ぴえん」は教科書にないことば
私が教えている日本の大学で、教科書にはない日本語を習う授業をしました。日本人の大学生に教室に来てもらって、キャンパスで友達としゃべる時に使うことばを教えてもらったのです。
テーマは、友達を遊びに誘うときの会話です。留学生と日本人学生がグループになって、誘う場面の短いドラマを作って発表してもらいました。教科書には(たぶん)出てこない「若者ことば」がたくさん出てきましたが、その中の2つを紹介したいと思います。
1.「やっほー」
友達と会ったとき、最初のあいさつとして使います。このことばは、もともとは山に登った時に大きい声で叫ぶ言葉でした。山の上から、向かいの山に向かって「ヤッホー」と叫んだら、遠くにいる仲間によく聞こえます。それに、「ヤッホー」とこだま(echo)も返ってきます。そのように山で使われていたことばが、若者の間で今、英語の「Hi!」と同じようなあいさつのことばになっています。明るく、軽い感じで言うのがポイントです。
2.「ぴえん」
がっかりして、残念な気持ちになったことを表します。泣くときの声の擬音語(オノマトペ)からできたことばです。泣く声の擬音語はもともと、「エーン」でしたが、「ピエン」は新しい擬音語で、かわいい感じを出しています。友だちを誘ったのに断られた時などに、「今日は都合が悪いから、ダメだよ。」「ぴえん!」のように使います。悲しそうに言うのがポイントです。
若者ことばには、気をつけることが3つあります。
1つは発音が大切だということです。短いですが、アクセントやイントネーションやスピードなどがとても大切で、それらが適当でなければ通じない場合があります。たとえば、「やっほー」は「や」にアクセントを置いて「y」の音をしっかり発音し、「ほ」の「h」から「o」の音を出す前にちょっと待って小さい「っ」をはっきりさせ、「o」はまっすぐ長くのばします。これを間違えると、最悪の場合「あほう(阿呆fool)」に聞こえてしまうかもしれません。
2つ目は、若者ことばは古くなりやすいということです。例えば、海外で今この記事を読み、5年後に日本に来たとすれば、「やっほー」「ぴえん」がまだ使われているかどうかはわかりません。
3つ目は、使う相手と場面を間違えてはいけないことです。目上の人に対して話すときや、授業や仕事の場面では使ってはいけません。使えるのは、友達とのカジュアルな会話だけです。
この3つに気をつけて、教科書にはないけれど若者が普通に使っている日本語に、ぜひチャレンジしてみましょう。
コメント