敬語を使って話す場合は、
「相手の側の人」のことか、「自分の側の人」のことか、
話題が次々に変わっていくのに合わせて尊敬語と謙譲語を使い分けるのですから、
たいへんです。
まるで難しいゲームのように、集中力が必要です。
これは、外国人に限らず、生まれた時から日本語を話していても同じことです。
よく間違えるのはもちろん、敬語を使う場面を怖がる日本人もたくさんいます。
それでも、まだ電話が家に1台しかなかったころは、
子供の時からこの使い分けを練習するチャンスがありました。
うちの電話のベルが鳴って子供が緊張しながら受話器を取ると、
「おとうさんはいらっしゃいますか。」という声。
そこで、誰でも一度や二度はつい相手の言葉をそのまま繰り返して
「はい、おとうさんはいらっしゃいます。」
と言ってしまいます。
そして、周りの大人に
「父はおります。」と言いなさいと教えてもらうことによって、敬語の使い方を少しずつ理解することができました。
でも、一人一人が携帯電話を持つようになって、このような機会はほとんどなくなってしまいました。
もしかしたら、多くの人にとって、就職して新入社員研修を受けるときが、敬語をちゃんと習う最初の機会なのかもしれません。
日本語を後から勉強した外国人の皆さんは、教科書に書いてある使い分けのルールと基本的な尊敬語、謙譲語をいくつか知っていれば、もうそれだけで敬語については大勢の日本人に勝っていると言えそうです。